Shioriのボーナスタイム

育児がひと段落した主婦が隙間時間に好きなことを綴ってます

映画記録「怪物」ネタバレ考察レビュー

こんにちわ、Shioriです。

娘が入園してから3ヶ月経ち、家のことも体調も落ち着いてきたので、昼間に行ってきました!気になっていた映画!「怪物」!

怪物だーれだのキャッチコピーでCMもよく目にしますね。

万引き家族」や「そして父になる」「海街diary」でお馴染みの是枝裕和が監督を務め、ドラマ「Mother」「カルテット」など数多くの人気作品の脚本を手掛けた坂元裕二がタッグを組んだ映画。先日開催された第76回カンヌ国際映画祭脚本賞を受賞したことでさらに注目されている映画です。

ニュースやCMで見かけるたびに気になっていて、早くレンタルに出ないかな?と思っていたのですが、そういえば昼間なら見に行けるんじゃ?一人映画デビュー?となり、急遽行ってきました。

身軽にサクッと映画行けるようになったことがすごく嬉しい!

 

「怪物」あらすじ

映画『怪物』 公式サイト

大きな湖のある郊外の町。

息子を愛するシングルマザー・早織(安藤サクラ)、生徒思いの学校教師・保利(永山瑛太)、そして無邪気な小学生たち・湊(黒川想矢)と星川依里(柊木陽太)。それは、よくある子ども同士のケンカに見えた。しかし、食い違う主張は次第に社会やメディアを巻き込み、大事になっていく。そしてある嵐の朝、子どもたちは忽然と姿を消した。

 

以下ネタバレありレビュー

この映画はある事件を時間軸とし、それぞれの視点で物語を見ていく構成です。

それぞれの視点から繰り返し見ていくことで、徐々に真実がわかっていくサスペンス映画。

何があったのか、“怪物”とは、私なりに考察していきたいと思います。

 

まずは主軸となる早織の視点で物語が始まります。

早織の視点

クリーニング店で働きながらシングルマザーで息子の湊を育てている早織。その大事な大事な一人息子の湊の様子がどうもおかしい。耳を怪我して帰ってきたり、水筒の中身が汚れていたり、靴が片方しかなかったり・・・。いじめを疑い話を聞くと、担任の保利先生にやられたという。それ以外にも「お前の脳みそは豚の脳みそだ」などの暴言を吐かれたり、暴力を受けたり、教師としてあるまじき行動をしていると聞いた早織は学校まで話を聞きに行った。

そこでの学校の対応は思っていたものと全く違った。

保利先生や校長、教頭も謝罪するが、形だけの謝罪で終わらせようとする。何か聞いても「ご指摘は真摯に受け止め・・・」とロボットのように繰り返すばかり。だんだんとイライラしてくる早織に保利先生は「湊が星川依里をいじめている」と口にする。

その話を聞き、俄かには信じがたい早織は星川の家へ話を聞きにいった。そこで湊はいじめをしていないと確信し、また学校へ。何度訪問しても、冷静に話をしても、全く響かないように見える学校側に痺れを切らし、弁護士を雇って学校を訴えることにした。マスコミや他の保護者も巻き込み、事態はだんだん大きくなっていく。保利先生を辞めさせるようにして、すべては解決したかのように思えたが、ある嵐の日、湊は姿を消してしまう。

 

私が母親でも同じことをする。のらりくらりと交わされ、愛息子の様子はだんだんとおかしくなり、本来守ってくれるはずの教師たちも敵に見えてくる。自分だけでは無理だと感じたら、子供を守るためになんだってする、周りを巻き込むのだって上等だ!よくやった!と思っていました。安藤サクラさんの演技が素晴らしく、激しく感情移入しながら見ていたと思います。

この時の保利先生の無機質さが不気味で、物語の“怪物”という言葉が頭をよぎる。しかし、私には息子の湊や星川くんもどこか不気味さを感じ、誰が怪物なのか、何が原因で起こっていることなのか、そればかりを考えながら見ていました。

保利先生の視点

保利先生は今年から小学校に勤める新任の先生。誰にでも平等に接するような爽やかな先生で子どもたちからの信頼もそこそこあるように見えた。

ある日教室で騒ぎがあり、駆けつけると湊が教室で暴れていた。それを抑えようとして湊の耳に手が当たり、怪我をさせてしまう。あの湊の怪我は事故だったのだ。

また、星川の上履きがゴミ箱に捨てられていたり、トイレに閉じ込められていたり、星川がいじめられているのではないかと心配して見ていると、そこにいつも湊の影を感じる。それらのことから、湊が星川をいじめていると保利先生は判断した。星川の家に訪問し保護者に話を聞こうとするが、泥酔している父親が訳のわからないことを言うだけでまともに取り合ってくれない。「あいつの脳みそは豚の脳みそなんですよ、怪物ですよ、あいつは」そう父親は吐き捨てるのであった。

そしてあの日、早織が学校に乗り込んでくる日。大事にしたくはないからと、同僚に資料室から出られないようにされてしまう。そこで聞いたことは身に覚えのないことばかり。怪我をしたのも事故だったし、暴言なんてもってのほか。直接会って謝罪と誤解を解きたいと訴えるも、誤解かどうか、事実かどうかはどうでもいいと校長に言われ、だだ謝罪をするだけの対応を強要されてしまう。

そんな学校の体制のせいで不本意な対応をさせられ、ついにはクラスの子どもたちにも「保利先生が怖くて言えなかった」などと事実とは異なる証言をされてしまう。最終的に保利先生は学校を辞めさせられ、何もかもを失った。

その中で未添削の作文があることに気がつき、添削を始める。すると星川の作文に湊との関係性を示すトリックが隠されていたことに気がつく。二人は親しい仲だった。それに気がついた保利先生は居ても立ってもいられず、湊の家に向かう。早織に罵声を浴びせられ、まともに話も聞いてもらえない。そこで湊がいなくなったことを聞き、嵐の中一緒に探しに出る。

 

保利先生の視点になってから、印象がガラッと変わりました。さっきまでは不気味で何考えてるんだかわからない嫌な先生だったのに、実際はそんなことなかった。普通に生徒を思い、案じるいい先生だったのです。もう何が何だか。あれ、じゃあ怪物は?事件の全容は?湊に何があったの?混乱しながら見ていました。週刊誌の誤植を見つけ指摘するのが趣味の保利先生。確かに少し変わっている?陰湿なところもあるけれど、至って普通の先生に見えました。保利先生視点で見ると早織がモンスターペアレントに見え、身に覚えのないことで週刊誌に晒され、仕事も辞めさせられ、可哀想に見えてきます。

湊の視点

湊のクラスでは、星川への度がすぎる弄りが行われていた。クラスメイトの3人の男子を中心に「冗談だから、いじりだから」を免罪符のように使い、星川の靴を隠したり、後ろから突き飛ばしたり、トイレに閉じ込めたりしていた。湊はよくないことだとわかっていつつも自分の立場を考え、居心地が悪くても無関心を装っている。しかし、罪悪感を持っていることもあり、学校外であれば仲良く話をしようと星川に持ちかけるのであった。廃線した車両を秘密基地にし、仲を深めていく。自分の知らない価値観を教えてくれる星川と、唯一仲良くしてくれる湊。二人にとってお互いは特別な存在となり、次第に惹かれ合う。しかし、湊はその感情を素直に受け入れがたい。自分は普通ではないのか?脳みそが腐っているから人と違うのか?母親の早織に打ち明けようとするも、騒音にかき消され、うまく伝わらない。早織は悩んでいる様子を見て「普通でいいんだから。普通の家庭を持って、子供ができて、普通の幸せていいの。」と言ってしまう。さらに湊を追い詰めてしまったのだ。

 

星川をいじめていたのは湊ではなかった。しかも湊と星川はお互いがお互いを思い合う特別な関係だった。もう何度目かわからない驚き!え、やっぱり湊はいいやつだったの?怪物って?とここら辺から訳がわからなくなってきます。さすが是枝作品といった感じ。

 

そして物語はクライマックスへ。

今まで別々だった視点が嵐の日を視点に一つになっていく。

星川が父親から虐待を受けているようだと気がついた湊は嵐の日に星川を連れ出す。二人で秘密基地へいき、将来や生まれ変わりについて話す。

そして早織と保利も秘密基地へ辿り着き、大声で二人を探すが、嵐の中で思うように進まない。やっとの思いで土砂崩れで埋もれている車両を見つけ、泥をかき分け車両をこじ開けるが、そこに湊たちの姿はなかった。

場面は澄み渡った青空に切り替わり、泥だらけの湊と星川か晴れやかな顔で野原をかけていく。生まれ変わったのかな?自分は自分だよ。そんな会話をしながらエンドロールが流れていった。

“怪物”とは、なんだったのか

エンドロールを眺めながらまず出た言葉は、「はぁぁぁぁぁ〜…」だった。言葉にならなかった。何も言えなかった、が正しいかもしれない。ずっと思っていた怪物は序盤でひっくり返され、じゃあこっちか?と思ったものも結局違い、いつの間にかエンドロールが流れていた。じゃあ怪物って?

あえて言わせてもらうとしたら、怪物はいない。それが私の考えだった。

視点が違えば見え方も違う。それを一方的に怪物と決めつけることはできなかった。星川をいじめていた同級生については多く語られていなかったが、その子達にも何かあるのかもしれない。それでもいじめはダメだと思うが。誰しもが被害者にも加害者にもなりうるのだ。

この映画はずっとそれを訴えかけていたのだと思う。「怪物」とタイトルをつけ、観客の関心を怪物探しに集め、焦らし、翻弄していく。誰かを悪者にしてしまえば、分かりやすく楽になれる。でも果たしてそれでいいのか。

最後のシーンに関しても湊たちは生きているのか、二人だけの世界に行ってしまったのか、明確に示されてはいないが、私は生きていたと思った。そうであってほしい。最後の最後に保利先生が全てを理解し、湊は間違っていないと叫びながら二人を探すシーンがあった。あの声が二人に届いてほしいと願う。そして同じ母親として、子どもの無事は願わずにはいられない。

 

これから私の娘も色々な困難に出会うだろう。加害者にも被害者にもなってほしくはないが、何もない人生なんてない。その時に自分で道を選べるように、後悔しないように、これからも考え続けていきたい。

 

今までで1番のボリュームになってしまいましたが、最後まで読んでくださりありがとうございました。映画「怪物」観られた方はいろいろお話ししたいです。他の方はどう感じたのか、人によって印象が全く異なる映画だと思うので。

では、また。